2310No.89
KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」
産業廃棄物の野外焼却に関する指導状況について
廃棄物処理法第16条の2では、「何人も次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。」と規定し、適用除外される場合として、
1 一般廃棄物処理基準又は産業廃棄物処理基準等に従った廃棄物の焼却
2 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却(例:家畜伝染病予防法等)
3 公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却(例:正月のどんど焼き等)又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの※
※政令第14条(例外となる廃棄物の焼却)
@国または地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却
A震災・風水害等の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却
B農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ない廃棄物の焼却(例:山焼き、もみ殻燻蒸等)
Cたき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であって軽微なもの
と定めています。この法律は、原則焼却行為を禁止とし、例外に当てはまる場合のみ禁止を解除するという立て付けになっています。1、2及び3の前段は理解できるとして、3の後段を受けた政令第 14条、特にCの規定はいかにもこの法律の曖昧さを浮き彫りにするものとなっています。野外焼却行為で指導・検挙されるは、Cを自分勝手に拡大解釈して又は法規定を知らずに廃棄物の焼却行為をした場合が大部分と考えられます。
環境省では、毎年産業廃棄物に係る許可権限を有する都道府県・政令市を対象にした廃棄物処理法運用状況に関する「行政組織等調査」を実施し、集計結果を公表しています。前月寄稿させていただいた「立入検査実施状況」もこれを出典としています。
最新の令和3年度集計では、産業廃棄物の野外焼却に関する法運用状況が以下のとおり纏められています。
表1 野外焼却の件数及び量(経年変化)
|
H20 |
H21 |
H22 |
H23 |
H24 |
H25 |
H26 |
|
野外焼却件数(件) |
4,025 |
3,556 |
3,120 |
2,568 |
2,319 |
1,970 |
1,836 |
|
|
うち 量が把握された件数(件) |
2,991 |
2,966 |
2,368 |
2,467 |
1,893 |
1,588 |
1,212 |
野外焼却量(t) |
1,737 |
1,672 |
1,284 |
1,149 |
886 |
1,331 |
621 |
|
|
H27 |
H28 |
H29 |
H30 |
R01 |
R02 |
R03 |
|
野外焼却件数(件) |
1,529 |
1,347 |
1,164 |
1,304 |
1,230 |
1,107 |
1,076 |
|
|
うち 量が把握された件数(件) |
1,028 |
849 |
702 |
871 |
765 |
656 |
667 |
野外焼却量(t) |
956 |
533 |
677 |
771 |
748 |
411 |
629 |
|
表2 野外焼却量別の件数(抜粋して経年変化を表す)
|
H20 |
H23 |
H26 |
H29 |
R02 |
R03 |
1t未満 |
2,542(85.0%) |
2,318 |
1,088 |
609 |
586 |
609 (92.8%) |
1t〜5t未満 |
373 (12.5%) |
118 |
98 |
69 |
56 |
43 (6.6%) |
5t〜10t未満 |
52 ( 1.7%) |
13 |
12 |
13 |
9 |
7 ( 1.1%) |
10t〜50t未満 |
22 ( 0.7%) |
16 |
14 |
8 |
4 |
6 ( 0.9%) |
50t〜100t未満 |
0 − |
1 |
0 |
1 |
0 |
1 ( 0.2%) |
100t以上 |
2 ( 0.0%) |
1 |
0 |
2 |
1 |
1 ( 0.2%) |
合計 |
2,991 |
2,467 |
1,588 |
849 |
656 |
667 |
注:括弧内は年間件数に対する構成比を表す
表3 野外焼却に対する不利益処分の有無(令和3年度)
不利益処分の発出 無し |
不利益処分の発出 有り |
||
行政指導に従った |
981(件) |
改善命令(法第19条の3) |
0件 |
現在検討中 |
5 |
措置命令(法第19条の4) |
0 |
行為者不明 |
26 |
処理業の許可取消し等 |
3 |
その他 |
40 |
その他 |
1 |
合計件数 1,052件 |
合計件数 4件 |
注:有効回答のみ集計しているため、表1の件数とは一致しない
以上の結果から、次のことが判ります。
1 許可権者が把握した野外焼却件数は、平成20年度の4分の1程度まで減少している。
そうした中で、近年は減少幅が鈍化し、1,000件程度で横ばい傾向を示している。
2 件数の減少に伴って、焼却量1トン以上の野外焼却件数も減少しており、1トン未満の焼却行為 が90%以上を占めている。
3 野外焼却は、明らかな違法行為ではあるが、許可権者が把握した行為のうち、不利益処分に至った割合は、僅か0.37%に留まっている。
焼却禁止規定違反は、不法投棄罪と並び最高罰が適用される違反行為ですが、行政が探知した案件においては、意外と穏便な対応がされていると感じます。
一方で、本コラム昨年12月号に寄稿しましたが、警察白書によれば令和2年度の1年間で、違法焼却による検挙件数は2,784件に達しており、平成22年度以降同レベルで推移しているという事実があります。無論、環境省の取りまとめには、一般廃棄物の野外焼却を含んでいないことはありますが、この検挙件数と不利益処分発出数の差の理由を探すことは困難です。野外焼却に対する警察と行政の捉え方(対処法)の差と考えるのは、間違っているのでしょうか。行政職と警察職の違いは理解するとして、例えば同程度の野外焼却行為に対して、住民が役所に通報した時と警察に通報した時の事件処理に、行為者の人生を左右しかねない大きな差が生じることを懸念してしまいます。
いずれにしても読者の皆様には、野外焼却は重大な違法行為であることを改めて認識いただきたいと思います。前出Cの暖を取るための「たき火」行為も、自らの判断で特例範囲内とすることは大変危険です。これから寒い時期に向かいますが、「たき火」は行わず、別の手法で暖を取る対応を考えるなど確実な遵法維持に努めていただくことを推奨します。