2308No.87
KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」
一般廃棄物広域認定制度について
リサイクル社会の進展とともに、事業者は自社排出の廃棄物の処理に責任を負うことはもちろん、自社が製造・販売した製品が廃棄される場合に、その処理について責任を負う『拡大生産者責任』を求める動きが強化されています。特に、一般廃棄物については、その処理が原則市町村に委ねられていることから、市町村負担軽減の観点からも、業界を巻き込んだ様々な取り組みが行われています。
拡大生産者責任の具体的な中身としては
(1)製品・容器等が廃棄物となった際の処理困難性を事前評価し、適正処理が困難にならない商品設計や素材の選択を行うこと。
(2)適正処理方法に関する情報提供を行うこと。
(3)市町村による処理が困難な場合は、その適正処理に協力すること。
が、廃棄物処理法第3条第2項に「事業者の責務」として挙げられています。
容器包装リサイクル法や家電リサイクル法なども拡大生産者責任の考え方のもとで制度化されたものですが、こうした個別リサイクル法で規定されていない廃棄物の処理を円滑に実施するために設けられたのが、「広域認定制度」です。一般廃棄物と産業廃棄物は別個に認定を受けることになっていますが、今回は一般廃棄物広域認定制度について書いていきます。
上述(3)に基づき、市町村に代わって製造・販売者による処理を実施しようとすると、廃棄物処理法上は、他者の一般廃棄物を取り扱うことになるため、排出市町村毎に処理業許可を取得しないとそれが実現しないことになります。これを解消するために設けられたのが「広域認定制度」で、国から認定を受ければ国内全ての市町村での業務が可能となります。
直近令和3年度には、51件の広域認定が行われ、廃消火器や廃パソコンを中心に1万7千トン余りが引き取られ、その94.2%が再生利用されています。全国の一般廃棄物総排出量は約4千万トンですので、回収量としては微々たるものですが、循環型社会構築のためには貴重な取り組みと高く評価したいと思います。
上の表は環境省が取りまとめた実績表ですが、年代の経過とともに大きな変化が見られています。
平成17年以前は、回収量の大部分をパソコンが占め、4千トン弱に留まっていましたが、平成18年度から廃消火器の回収が開始されるとその量は一気に5倍程度まで増加しました。また、その後インクカートリッジや携帯電話・小型充電式電池の回収が始まるなど、徐々に種類が増加しています。
小型充電式電池は、破砕施設で火災・爆発事故を起こすなど適正処理の障害になっていますので、こうした広域認定制度による処理の推進は、市町村にとっては単なる処分量の削減以上に効果が期待できるものです。
一方で課題もあり、回収量自体が横ばいであること、認定件数も令和元年度の75件を最大に減少傾向にあることなど、先行きは決して楽観できるものでもありません。循環型社会の形成やその先にあるSDGsの推進の観点からも、業界関係者の更なる努力に期待したいと思います。