2305No.84
KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」
専ら物について(その2)
前回のコラムでは、専ら物とは何か、専ら物が規定された歴史背景等を書きましたが、今回は、専ら物の引き渡しに際して注意しなければならない事項を整理してみます。「専ら物」に該当する廃棄物は、廃棄物処理法の適用を受けないと誤解されている皆さんが多いことに対する警告という意味で書きます。
まず、専ら物の取り扱いについて、法的に適用が免除されている点を挙げてみましょう。
1 収集運搬及び処分に係る業務について許可不要
専ら物の引き取り及び再生処分について、法に基づく許可取得が免除されています。これは、一般廃棄物に該当する専ら物も産業廃棄物に該当する専ら物も同じ扱いです。(前回記載)
2 管理票(マニフェスト)交付義務の免除
産業廃棄物に該当する専ら物については、マニフェスト交付義務が免除されています。なお、一般廃棄物に該当する物は、もともとマニフェスト使用は義務付けがありません。
専ら物の取り扱いに関して、規定が免除されている点は、以上の2点に過ぎません。
ということは、今回の本題になる点ですが、このほかの規定は、専ら物といえども履行義務があるということになります。そういう点で、注意が必要な規定を列挙してみましょう。
1 処理基準の適用
排出事業者に課される産業廃棄物処理基準は、専ら物についても適用されます。例えば、保管施設における周囲の囲いや1辺60センチメートル以上の掲示板の設置が必要です。また、レアなケースですが引き取り業者の施設まで排出者自らが運搬するときは、運搬車両への表示義務が課されます。
2 産業廃棄物処理委託契約書の作成・保存
産業廃棄物に該当する専ら物については、「処理委託契約書」の作成と契約終了から5年間の保存義務が課されます。つまり、通常の産業廃棄物と同様に引き取りを実施する者との収集運搬契約、再生処分を行う者との処分契約の締結が必要です。
しかし、これを履行している排出事業者は極めて少ないのではないかと推測しています。「引き渡す相手からは契約締結の話を聞いていない。」と言われる排出者の皆さんも多いと思いますが、契約書作成の義務は、法では排出者のみに課された義務規定であって、処理業者は契約書作成に協力するという立場に過ぎないことをご承知ください。
考えてみれば当然のこととして理解いただけると思いますが、廃棄物を引き取り業者に渡したが、どこに運ばれるのか、だれが再生処分するのかも把握していないという状況は、廃棄物処理法が求める「排出事業者責任」の観点からも許容されることではありません。
なお、一般廃棄物の処理委託基準には、契約書作成の義務規定がありませんので、これに該当する専ら物は、対象外となります。
3 受託業務終了時の排出者への報告
前項と関連するのですが、以下のような規定が存在します。
法施行規則(省令)第8条の4の2第8号には、委託契約書に記載されなければならない事項の1つとして、「受託業務終了時の受託者の排出者への報告に関する事項」が規定されています。つまり、@運搬業務が終了して再生施設まで届けたA再生処分が終了した、@Aの状況を排出者へ報告しなければなりません。
参考に、皆さんが通常使用されている全産連の標準産業廃棄物処理委託契約書(ひな形)では次のように記載されています。
<第1号様式収集運搬契約書>第7条(委託業務終了報告)
乙は甲から委託された産業廃棄物の業務が終了した後、直ちに業務終了報告書を作成し、甲に提出する。ただし、業務終了報告書は、収集・運搬業務については、マニフェストB2票、又は電子マニフェストの運搬終了報告で代えることができる。
<第2号様式処分契約書>第7条(委託業務終了報告)
乙は、甲から委託された産業廃棄物の業務が終了した後、直ちに業務終了報告書を作成し甲に提出する。ただし、業務終了報告書は、処分業務についてはマニフェストD票、又は電子マニフェストの処分終了報告で代えることができる。
通常の産業廃棄物処理委託の場合は、マニフェストの使用が義務付けられていますので、契約書ひな形にあるように、B2票及びD票が排出者に戻ることで処理終了報告に代えることができますが、専ら物の場合はその使用が免除されていることから、別の方法で処理終了報告を行うことが必要です。法規定では、文書による報告に限定していませんので、契約書に記載されている手段であれば、電話・FAX等による報告でもOKということにはなります。
実際の対応としては、ひな形に沿った契約書を作成し、自主的にマニフェストを使用した中で、B2票及びD票の戻りを確認するというのが現実的でしょう。
なお、前項と同様に一般廃棄物に関しては処理委託契約書の作成自体が規定されていませんので、処理終了報告の規定も適用されません。一般廃棄物の場合は市町村施設への搬入を前提としていますので、処分段階で不正処理が生じるリスクは極めて少ないことからこのような法の立て付けとなっています。
この他にも、「多量排出事業者」に係る処理計画と処理実績の報告に関して、専ら物も対象になることと、年間千トンの集計量にそれを加算することも承知しておきたい事項です。
以上のように、専ら物の処理に関しても多くの法規定が適用され、免除されるのは処理業許可だけと言っても過言ではないことが理解いただけたでしょうか。
前回と今回2回の専ら物に関する記載から、排出事業者の立場で、その注意点をまとめておきます。
1 まず引き渡す時点で、当該物が有価物か廃棄物かを判断する。
有価物であれば、廃棄物処理法は適用されない。(以下の手続き不要)
2 専ら物に該当する場合は、それが一般廃棄物か産業廃棄物かを判断する。
金属くずやガラス瓶は、全てが産業廃棄物に該当しますが、紙ごみや繊維くずの場合は、業種限定がありますので、どちらに該当するかは必ず判断が必要です。
3 一般廃棄物該当物は、特段の手続きを必要としませんが、産業廃棄物に該当する専ら物は、業許可・マニフェストの規定が免除されている以外は、処理基準・委託基準が適用されます。
4 特に注意したい点は、処理委託契約書の作成と処理終了報告を受けることです。
今回は、専ら物を排出する事業者の皆様への注意点を中心に書いてきましたが、読者の中にはそれを引き取るまたは再生処分する立場で、業務をされている方もおいででしょう。契約書の作成や処理終了報告は専ら物の処理受託業者に係る責務とお考えいただき、排出事業者と情報共有しながら適正処理に努めていただきますようお願いします。