2301No.80
KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」
年頭に当たって
明けましておめでとうございます。
読者の皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えのこととお慶びを申し上げます。
振り返れば、昨年は、オミクロン株による新型コロナ感染症が大流行して多数の感染者が発生し、世界最高患者数という時期もありました。幸いなことに、重症患者の割合は低く医療崩壊は免れましたが、国内での患者発生から満3年が経ちますので、1日も早い終息を願うばかりです。
また、ロシアによるウクライナ侵攻は泥沼化し、燃料や食品価格の高騰に繋がるなど私たちの生活にも大きな影響を与えています。核が抑止力となって第3次世界大戦には至っていませんが、1日も早く戦争が終わり平和な世界が戻ることを願ってやみません。
明るい話題では、年末に開催された「サッカーワールドカップカタール大会」において、日本代表が奮闘し、優勝経験国のドイツ・スペインを撃破して決勝トーナメントに進んだことが挙げられます。流行語大賞は締め切りの関係でノミネートもされませんでしたが、締め切りがもう1か月遅かったら間違いなく「ブラボー」が大賞受賞となったことでしょう。新しい景色は見られませんでしたが、確実に未来への扉は開かれた感があります。今年は、3月からWBCが、9月からフランスでラグビーワールドカップが開催されます。サッカーに続いてこうした競技を通じて、日本中が盛り上がることを期待したいと思います。
さて、1年の始めですので昨年1年間を振り返りながら、環境・廃棄物分野における今年の展望をしてみたいと思います。
まず最初に、法改正の点では、昨年4月に「プラスチック資源循環促進法」が施行となりました。年間250トン以上のプラスチック使用製品産業廃棄物(「廃プラ」+「プラスチック副産物」)を排出する事業者は排出抑制・再資源化などに関する目標を設定し、計画的な取り組みを実施することが求められることとなりました。さらに、それらの情報をインターネットなどで情報公開することが努力目標として規定されています。努力目標ではありますが、勧告・命令・氏名公表等の規定が設けられていますので、多量排出事業者に該当した場合は特に注意が必要です。もっとも、取り組み自体が不十分な場合でも、いきなり罰則が適用されることはないと思いますが、コンプライアンス遵守の観点で、排出者としての責任を果たしていく必要があります。
また、一般廃棄物に係る廃棄物では、ペットボトルを除く「その他プラスチック類」がこの法律の対象物となっています。現時点で新法対象物を「可燃ごみ」として収集処分している自治体にあっては、住民に分別排出を求めたうえで、それを収集する体制の構築が必要となりますが、まだまだ様子見としている自治体が多いように見受けられます。今後は、該当プラスチック類の民間資本による受入れ施設の整備が進んでいくものと推測されますので、より高度な再生利用が促進されることを期待します。
次の話題としては、電子マニフェストの利用割合が75%を超えるところまで増加したことが挙げられます。政府が進めるIT化の動きもあって、ここ10年間で2.5倍に、1年前と比較しても4%程度上昇している状況が見られます。この先、90%程度までは比較的短期間で到達できるのではないかと推測します。未加入の排出事業者の皆様にとっては、導入に際しての躊躇があるかも知れませんが、交付・保存・報告と全ての場面でメリットを享受できると思います。是非、加入のご検討を頂ければと思います。
3点目に、廃棄物処理を巡る事件・事故としては、新たに発生したものは少なかったのですが、過去に起きた不法投棄の後処理については、ほとんど進展のない1年でした。
「熱海市内で発生した土石流」案件では、廃棄物不法投棄についての調査・指導が適切であったかの検証が行われていません。土石流発生原因に係る盛土行為の指導監督責任について、熱海市と静岡県が互いに責任回避している状況で、とてもそこまでは手が回っていないのが残念で仕方ありません。一方、昨年9月の集中豪雨の際、浜松市天竜区内で発生した土石流に関連して、過去にこの場所で不法投棄があったことが報道されましたが大きな問題には発展しませんでした。それは、投棄通報があった際の調査・指導が適切に行われ、その記録もきちんと残されていたからと推測します。迅速・的確な対応と、文書作成の重要性を再認識しました。
このほか、2年前に発生した伊豆市内宗教法人敷地内における不法投棄事件について廃棄物処理法に基づく「措置命令」が発出されていますが、命令期限を過ぎた現在も原状回復がされた若しくは行政代執行で撤去がされたとの情報はありません。新聞では、下流河川における水質検査結果に異状がなかった旨の報道がされていますが、これでは投棄廃棄物の全量撤去等の抜本的な解決は望むべくもありません。
さらに、富士川支流雨畑川における汚泥投棄事件については、発覚から4年が過ぎようとしていますが、監督権限を有する山梨県は相変わらず動こうとはしていません。そればかりか、投棄現場下流の川底に堆積している有害物質を含むポリマー汚泥についても、問題がないの1点張りで、具体的な調査さえ拒否しています。河川における濃度云々ではなく、そこに人工的な汚染物が堆積していることが異常であることに目を向けていくべきです。下流に位置し被害者の立場である静岡県は、国を巻き込みながら声を大にして山梨県への投げ掛けをしていく1年にして欲しいと思います。
最後の話題は、災害廃棄物処理について大きな課題が提起されたことでした。9月末に県内を襲った集中豪雨により各地で浸水被害が発生し、それに伴って大量の災害廃棄物が発生したのですが、静岡市では、その片付け段階で集積場所が決まっていないことが問題になりました。災害廃棄物は、一般廃棄物に該当することからその処理責任は市町村が有しています。県内では全市町で「災害廃棄物処理計画」が策定されているのですが、今回図らずもその弱点が露呈されることになりました。災害廃棄物の後処理に重点を置いた計画ではなく、発災直後の仮置き場を重点とした計画である必要性を痛感した一件でした。東海沖大規模震災を想定した計画になっている市町が多い中で、より発生頻度が高い台風やゲリラ豪雨に伴う浸水被害廃棄物の処理について、計画見直しを迫られています。
以上、こうした世相の中で、なかなか明るい話題で年明けとはなりませんが、皆様にとって幸多い1年となりますことを祈念し、本年最初のコラムとさせていただきます。
引き続きのご愛読宜しくお願いします。