2212No.79

KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」

 

廃棄物処理法違反の検挙状況について(警察白書から)

 

 廃棄物の適正処理の確保は、法令遵守の観点で事業活動を行っていくうえでは避けて通れない重要な事柄です。読者の皆さんも排出事業者或いは処理業者の立場で、処理基準や委託基準の遵守には、ことさら気を配っておいでのことと思います。

 

そうした中で、全国で発生している法律違反の状況がどうなっているかは関心があるものと推測します。今回は、警察庁が公表している「警察白書」から集計した結果を基に、廃棄物処理法違反検挙状況について情報提供させていただきます。

 

まず、法律違反に対する罰則は、行政罰と刑事罰に区分されることは、皆さんご存じのとおりです。前者は、通称「行政処分」と呼ばれるもので、「許可取消命令」や「業務の停止命令」「改善命令」等があり、処分者は廃棄物処理法の許可権者である知事又は政令市長(以上産業廃棄物)または一般廃棄物に関しては市町村長となります。これについては、機会を改めて書いてみたいと思います。

 

一方、後者の刑事罰については、刑事裁判等の手続きを経て違反者に対して「懲役」「禁錮」「罰金」等の刑罰が科されます。これについて、調査してみると廃棄物処理法の歴史を反映した意外で、興味深い(不謹慎?)結果がまとまりました。

 

まず、次の表をご覧ください。これは、過去30年間の検挙件数を示しています。年度が飛び飛びになっているのは、経年的な傾向を掴める範囲で手抜きをしたためです。

 

(注1)      焼却禁止規定が法律化されたのは、平成12年

(注2)      その他の分類が、年度により異なることに注意

この結果から、次のことが判ります。

(1)  検挙件数は、平成20年くらいまでは、漸増してきましたが、それ以降は5千件台で横ばい状況。県別の状況は公表されていませんが、単純に47で割れば、1県当たり120件/年(5,50047)程度となります。

 

(2)  直近の令和2年の検挙件数は、5,759件(内訳は6,683人、403法人)で、うち不法投棄が50.7%、違法焼却が48.3%を占めていて、この2つだけで全体の99%となっています。その他に分類される無許可営業や委託基準違反は全部合わせても1%に過ぎません。この傾向は、ここ10年ほど変わっていません。

 

(3)  不法投棄の検挙件数は、平成16年頃まで漸増し、その後はほぼ横ばい状況となっています。これは、法律規定にある「みだり」の判断基準が厳格になったためで、従来の不法投棄は「野原に無断で廃棄物を捨てる」というものが大部分だったのに対し、ごみ集積場への違法排出や自社敷地内に穴を掘って埋める等の行為に対してもこれを適用するなど適用範囲が拡大されたことが、結果に表れています。

  また、投棄物別では、一般廃棄物該当物が90%以上を占めており、産業廃棄物は10%以下ですが、数量的な統計は、警察白書ではされていません。

 

(4)  焼却禁止規定が法律に盛り込まれたのは、平成12年でした。警察白書では、違反形態にそれを記載し始めたのが平成30年からですが、それ以前のその他違反の大部分は違法焼却が占めていたものと推測できます。そうした見方をすれば、平成22年以降、不法投棄と同程度の検挙件数であることが判ります。

 

(5)  無許可営業や委託基準違反での検挙件数は、近年は格段に減少しています。これは、平成12年に排出事業者に対する産業廃棄物委託基準が強化され、契約書の書面での作成が義務付けられたことなどがこの結果に結びついていると考えられます。法改正が徹底する平成16年頃までは、検挙件数は変化しませんでしたが、それ以後の減少は特筆に値します。この結果は、適正処理確保に関する法整備の施策が的確であったことを表しています。

 

以上、廃棄物処理法違反の検挙状況について記載させていただきましたが、他人事だと思わないことが必要です。また、法違反は行為者個人の責任はもとより、場合によっては組織全体の責任として、法人自体が検挙されている事例も10%近くあります。皆様におかれましては、これらのことを認識し、改めて原点に立ち返り、法令遵守に取り組んでいただくようお願いします。