2208No.75
KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」
掛川・菊川市が計画する一般廃棄物焼却施設について
今回は、掛川・菊川の両市が整備する新たな廃棄物処理施設の建設計画について、情報提供させていただくとともに私の意見を述べてみたいと思います。
両市は一部事務組合を構成し、一般廃棄物処理を実施してきました。焼却施設は、平成17年(2005年)9月に完成し、当時は県内初のキルン式ガス化溶融炉として注目を浴びました。しかし、昨年8月に発生した火災により使用不能となり、10月以降は市外業者にその処理を委託する状況が続いています。また、現施設の復旧には10億円以上の費用が必要であることと、3年後には施設更新の時期が到来することから、復旧を断念して、新施設の建設を前倒しすることとなりました。
そこで、打ち出されたのが「廃棄物処理施設整備等基本構想」で、これをたたき台に本年3月から専門家を交えた検討委員会が開催され、構想の実現性・妥当性についての議論が展開されています。基本構想の第1優先方式として掲げられているのが、「民設民営方式」で、ここまでの検討委員会の議論は、その手法の是非について集中していると報道されています。民設民営方式は、施設の建設・維持管理・撤去までを全て民間事業者が実施し、両市が一般廃棄物処理を委託(日量120トン程度)する形態を取る一方、当該事業者の経営を安定させるため、産業廃棄物も併せて処理(日量120トン程度)できる日量240トンの焼却施設を建設するというものです。これにより第2優先方式として打ち出しているPFI(民間資金等活用事業方式=浜松市でも導入済)手法を用いた場合よりも、年間2億円程度の経費削減が可能と試算しています。基本構想のまとめとして、民設民営方式は、施設建設費及び維持管理経費の経済性比較の観点で、最も財政負担を軽減できる結果となったと結論付けています。
3月に検討委員会審議が始まった時点から、私は民設民営方式について、反対する立場でその議論を注目してきました。反対の理由は、次の通りです。
(1) 一般廃棄物処理は、自治事務として規定された自治体固有の義務であって、経費削減を理由にした民間委託は、義務の放棄に繋がる。
(2) 委託先事業者の経営安定のために、当該施設での産業廃棄物処理の併用を認めることは本末転倒。迷惑施設の設置を受入れ、自分たちが排出した一般廃棄物処理ならば止むを得ないと理解してきた地元の住民感情を無視するもの。
(3) 既存の民間処分業者の経営への影響を考慮せずに、自治体支援の下で焼却施設が建設されることへの反発やそれに対する説明責任。
(4) 処理が予定されている建設系廃棄物・食品廃棄物や廃プラスチック類は、資源循環の観点からも再生利用を推進していくべき産業廃棄物であって、焼却処理は時代の流れに逆行しており、かつ二酸化炭素の排出増に繋がる。
こうした中で、7月16日検討委員会が開催され、「一般廃棄物だけを扱う焼却炉を公設で整備することが望ましい。」との提言がまとめられ、私もほっとしたところです。
新聞では、両市ともに検討会の議論を尊重する姿勢を示しているため、基本構想に盛り込んだ産業廃棄物の受入方針は、事実上撤回が決定したと報道されています。
近年、県内の自治体においても、最終処分場を区域内に設置するよりも、他地域の民間処分場へ委託処理する方が経費的にメリットであるので、新規最終処分場の設置は計画しないという方針を打ち出した事例がありました。確かに自治体にとって経費削減は、大きな課題ではありますが、こうした都市基盤を支える施設の建設に関して、経費比較のみで安易な道を選択することが無いことを期待したいと思います。