2207No.74
KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」
盛土条例の施行について
早いもので、熱海市内で起きた盛土崩壊に伴う土石流災害によって27名の死者・行方不明者が発生した事件から、3日で1年が経過します。本件については、発災直後の昨年8月と11月の本コラムで情報提供させていただきましたが、こうした災害の再発防止のために「静岡県盛土等の規制に関する条例」が制定され、今月1日から適用(施行)されましたので、概要をお知らせします。
盛土工事に関する規制については、従来全くなかったわけではなく、「静岡県土採取等規制条例」の中で、千平米、二千立米以上の土砂の採取又は搬入に対しては、届出制度が設けられていました。47年前の1975年(昭和50年)に制定されていますので、約半世紀の歴史があります。条例目的は第1条で「土の採取等について必要な規制を行うことにより、土の採取等に伴う土砂の崩壊、流出等による災害を防止するとともに、土の採取等の跡地の緑化等の整備を図り、もつて県民の生命、身体及び財産の安全の保持と環境の保全に資することを目的とする。」とされています。条例の名称にあるように、どちらかと言えば土石採取現場での崩壊事故を防止することからスタートしていますので、盛土に対する安全確保の観点では、強制力も弱く、罰則も限定的でした。これが、土石流災害発生の一因と捉え、盛土工事の部分を分離して新たな条例制定に至ったものです。
新条例の要点を列挙してみます。
1 基準に適合しない土砂等を用いた盛土等の禁止
土砂基準に適合しない強度不足な土砂や有害物を含む土砂を用いてはならない
2 一定規模以上の盛土等の許可( 面積千平米以上又は土量千立米以上が対象)
(1) 周辺住民に対する説明会の開催(事業計画の周知)
(2) 盛土等の許可申請(許可権者:全て県知事)
(3) 許可基準の遵守(資格要件、災害防止基準、構造基準、環境保全基準等)
3 搬入開始後の規制
(4) 土砂等の搬入時の規制(搬入土砂の発生元や汚染がないことの確認義務)
(5) 盛土等完了までの管理に関する規制(管理台帳の作成、掲示板の設置等)
(6) 盛土等の完了時の規制(完了届、許可権者による完了検査)
4 その他条例運用に関する規定
(7) 公表(不利益処分命令を受けた者の住所、名称等の公表)
(8) 罰則(最高2年以下の懲役又は100万円以下の罰金=地方自治法の罰金限度額)
併せて、条例施行に当たって注意すべき事項を書いてみます。
1 土砂等の定義
条例では、これを「土砂及び土砂に混入し、又は付着した物、改良土及び再生土」と定義しており、廃棄物処理法に規定する廃棄物、採石法・砂利採取法に基づき採取した土砂、土壌汚染対策法に規定する汚染土壌等は非該当としています。
2 盛土等の定義(該当・非該当の判断)
産業廃棄物である「がれき類」を受入れて再生砕石を製造しているプラントでは、処理前物及び処理後物(再生砕石)の保管面積・容量が条例規定を上回っていても盛土等には該当しません。(非該当)
一方、購入した再生砕石を資材置場又は建設工事現場近くの土場に、千平米又は千立米以上を保管(一時的な仮置きを含む。)する場合は、条例に基づく許可の対象になります。(該当)
また、土地造成のための土砂搬入で規定数量以上のものは、当然に許可対象となり、田の嵩上げによる畑や資材置場の造成も含まれますが、千平米以上の平坦な土地に駐車場等で使用するために再生砕石を敷き均す等の工事は、条例運用規定で許可不要となっています。
3 盛土等を行う区域の土壌汚染状況の調査
許可対象工事では、区域の面積に応じて規定された箇所から試料採取し、土壌汚染状況の調査が必要です。基準は、土壌汚染対策法に定める溶出基準を準用して適用されますが、ダイオキシン類まで含めた分析が必要ですので相当の費用負担が生じます。
概要は以上ですが、詳細をお知りになりたい方は、以下のURLでご確認ください。
https://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-065/morido/top.html
今回、静岡県では緊急性を考慮して新条例制定となりましたが、実は国ではこれまで放置されてきた盛土の規制を行うための法制化作業が進んでいます。既に本年5月20日に「宅地造成及び特定盛土等規制法(通称「盛土規制法」)」が成立し、来年5月までに施行されることが決定しています。となると、法施行後の条例との手続きの重複回避、知事権限と政令市長権限の整理(法では、政令市内の案件に対する許可権限は市長)等、多くの課題が浮かんできます。これらについては、改めて情報提供させていただきます。