2205No.72
KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」
山梨県内における汚泥の不法投棄について(第6報)
4月9日付け静岡新聞朝刊の記事で、『富士川水系の汚泥投棄問題 山梨県、水質調査打ち切り』との報道がされましたので、今回は、本コラム令和3年6月号の続報として記事の内容を読者の皆様にお伝えするとともに、私の見解を書いてみたいと思います。
今からちょうど3年前の5月に発覚した富士川支流雨畑川における汚泥不法投棄事件に関して、山梨・静岡両県と国土交通省は、流出した汚泥の環境への影響を調査するため河川の水質調査や堆積汚泥の分析を実施してきました。その結果は以下のとおりでした。
調査は、流出汚泥成分のうち特に毒性が高いとされる凝集剤由来の「アクリルアミドモノマー」の濃度を把握する方法で実施されました。
結果は表のとおり、山梨県が調査した全測点で非検出でしたが、本年1月の調査では、静岡県は富士川下流域など4測点で過去最高濃度を検出し、国土交通省実施分でも雨畑川が流れ込む早川と富士川の合流地点の富山橋など全ての測点で検出しました。
これらの結果を受けて、山梨県は「アクリルアミドモノマーの拡散実態調査を打ち切る方針を決めた。」と発表し、その理由を「静岡県と国土交通省の検出データについて「全国の河川と比べても特別高い値が出ているわけではなく、人体や水生生物への影響はない。」としています。
今回の新聞記事を見て最も強く感じられることは、この汚泥不法投棄案件に対する山梨県の消極的な対応です。3年前に本コラムに投稿して以降、この姿勢は変わっていませんし、これで幕引きを図ろうという意図が透けて見えます。
自然には存在しない「アクリルアミドモノマー」が広範囲に拡散し、これによる環境影響も危惧され、下流県では追跡調査が継続されているのに、当事者である山梨県が勝手に「や〜めた」というのは、あまりにも無責任です。そこまで露骨に決着を図ろうとする判断は、投棄行為者に対する忖度でもあるのかと疑ってしまいます。
昨年4月23日の衆議院環境委員会では、富士川堆積汚泥の問題について質問を受けた当時の小泉環境大臣が「地元から相談があれば、適切に対応する。」と答弁しています。静岡県はもっと積極的に関与し、腰抜けの山梨県の状況を国に訴えるとともに、更なる環境影響調査や堆積汚泥の除去対策等について国の支援を要望していく必要があると考えます。