逮捕から一転不起訴処分にさらに・・
前回コラムで、廃棄物処理法違反による逮捕案件について情報提供させていただきましたが、令和3年2月22日付け朝刊に本件については不起訴との記事が掲載されていましたので、改めて私が感じたことを書いてみたいと思います。
掲載記事の内容は以下のとおりです。
「無許可盛土で会社役員を起訴。甲府地検」
甲府地検は2月21日、無許可で盛土をしたとして「土砂の埋め立てなどの規制に関する条例」違反の罪で、「バイオ・テック・ジャパン」の役員である佐田和彦容疑者を起訴した。一方、地検は山梨県が発出した産業廃棄物の撤去命令に従わなかったとした廃棄物処理法違反(措置命令違反)については、不起訴とした。処分は15日付け。理由は明らかにしていない。
起訴状によると、令和3年7月から12月、3千平方メートル以上は県知事の許可が必要なのに、北杜市内の約5,200平方メートルの土地に無許可で土砂を埋立てたとしている。山梨県警は、今年1月12日に廃棄物処理法違反の疑いで逮捕、2月1日には土砂の埋め立てなどの規制に関する条例違反の疑いで再逮捕していた。
前回コラムでは、措置命令違反よりも一般的には判決(罰則)が重くなる不法投棄罪を適用しなかった点について疑問を呈しましたが、今度は違反事実が動かしようもない措置命令違反も不起訴とするという驚きの判断がされました。
通常、逮捕状の請求に当たっては、警察と検察が事前に十分協議を行い、立件・公判維持が可能なことを確認してから手続きを行います。その過程で、不法投棄罪よりも違反事実がより明らかな措置命令違反の罪状になったのではないかと推測したと前回コラムで記載しました。
今回、廃棄物処理法違反を不起訴とした理由は、理解できませんが、一点思い当たるとすれば、一連の産業廃棄物不適正処理に関して、事件発覚直後の平成27年に佐田容疑者が無許可処分業(廃棄物処理法第14条第6項違反)で罰金刑に処されたということがありました。その点で、不法投棄罪が問われ(問え)なかった理由は、一事不再理の原則に抵触するからとの判断がされたのかも知れません。しかし、措置命令違反については、その原則も踏まえ逮捕状の請求に至ったはずですので、理解に苦しむところです。起訴に当たって改めて裁判所との確認の中で、これも含めて一事不再理原則に抵触すると考え、公判維持が困難と判断し不起訴としたのでしょうか。
罰則を調べてみると、措置命令違反は、5年以下の懲役若しくは罰金1千万円又はその併科であるのに対し、山梨県条例の違反は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金となっており、明らかに廃棄物処理法違反の罰則が重くなっています。もちろん、違反根拠が異なりますので、夫々の罪に対して罰則を科すことは可能ですが、前者の立件ができないとなれば、廃棄物撤去の資金拠出をしない佐田容疑者を懲らしめる方策として、後者の違反を問うことにしたと推測するのは、穿った見方でしょうか。
※一事不再理とは(ブリタニカ国際大百科事典から)
刑事訴訟法上,ある事件について有罪無罪の判決または免訴の判決があって確定した場合に,同一事件について再び公訴を提起することを許さない原則をいう。再び公訴が提起されたときは,審理を行なわずに免訴の判決がなされる。